From 03 To 06(Receivers)/THE SQUARE
演奏動画
アルバム"打ち水にRainbow"から、同アルバムでは唯一の和泉宏隆さんのナンバー、「From 03 to 06(Receivers)」のバッキングトラックです。動画はエレキギターパートを除いたバッキングトラックになっています。
(2022/04/24追記)サックスなしバージョンをリクエストいただきましたので、追加でアップいたしました。こちらのバッキングトラックにはギターパートが含まれています。
構成・コード進行・解説
Key=Eb Tempo=122.5
Ax2→B→C→D1→D2
→B→C→A
→B→C→D1→D3→D4 x n(F.O.)
A
|Eb |Eb7/Db|Cm7 |BM7 |
|Eb/Bb|Am7b5 |AbM7|Ab/Bb|
B
|Eb |Abm/Eb |Eb |Ab/Eb |
|Eb |Dm7b5 G7 |Cm7|Cm7/Bb |
|AbM7 |Gm7 |Fm7|Gm7 |
|AbM7 F/A|Eb/Bb Bdim|Cm7|Bbm7 Eb7 Aaug|
C
|AbM7 D7|Gm7 C7|Fm7 G7 Cm7|Eb7/B Eb7/Bb Eb7/A |
|AbM7 D7|Gm7 C7|Fm7 |AbM7/Bb |F/G|
D1
|Fm7 |Gm7 Cm7|Fm7 |Gm7 Cm7 Ebm7/Gb|
|Fm7 |Gm7 Cm7|Fm7 |F/G G7 |
D2
|Fm7 |Gm7 Cm7|Fm7 |Gm7 Cm7 Ebm7/Gb|
|Fm7 |Gm7 Cm7|Fm7 |AbM7/Bb |%|
D3
|Fm7 |Gm7 Cm7|Fm7 |Gm7 Cm7 Ebm7/Gb|
|Fm7 |Gm7 Cm7|Fm7 |AbM7/Bb |F/G|
D4
|Fm7 |Gm7 Cm7|Fm7 |Gm7 Cm7 Ebm7/Gb|
イントロや間奏に出てくるAセクションは、「最初にベースが全音下がり、あとは半音ずつ降りていく」という割とよく見かける進行です。定番としてよく紹介される進行は I→I7/VIIb→VIm→VIb→I/V→II7/IV#→IV→V7 で、6小節目がII7/VI#(Key=EbならF7/A)となりますが、ここではAm7(b5)としています。F7/Aなら構成音は下からA・C・Eb・F、Am7(b5)ならA・C・Eb・Gとなっており、機能的にはほぼ同じですが、この曲では小節頭のピアノやメロディのギターの音にFが入っていないためこの表記としています。
Aメロに当たるBセクションはI→VIm/Iというサブドミマイナーが入った進行がミソで、この曲の切ない感じを醸し出すポイントの一つになっていると思います。メロディはダイアトニックなのにコードがノンダイアトニックというのもポイントですね。6小節目からは定番のマイナーII-Vで7小節目のCm7に向かっています。13~14小節目の「ベースが半音で上昇していくところ」もぐっと来る進行ですが、この部分の最後のコードはBdimで、やはりそのあとに続くCm7に向かってドミナント進行する(BdimはG7の代理)、という構成になっています。同じコード(ここではマイナーのトニックであるCm7)に着地する方法が、短い間隔で2つ混在しているのがなかなか興味深いところです。セクション最後のAaugは機能的にはA7の代理で、このA7もEb7の代理(裏コード)となっており、この後のAbM7にドミナントモーションしています。Cセクション4小節目のA7も同じですね。
Cセクション最後やエンディングのサックスソロが始まる際の、サビ前のキメであるF/Gにどういう機能があるのか、僕にはちょっとわかりませんでした。AbM7/Bbからの平行和音になっているので、一瞬転調した、みたいなニュアンスを出そうとしているのでしょうか..。
サビであるDセクションはほとんど全部がマイナーセブンスコードで構成されていますが、聴感上はまったくマイナーっぽさを感じないのが不思議です。むしろポップな感じを受けるのですが、これはバッキングのリズミカルなアレンジ(8ビートでシンコペーションするパターンが繰り返される)が効いているんでしょうね。"Omens Of Love"や"雲路"など、和泉氏のTHE SQUARE時代のナンバーのサビにはこのパターンが多用されていて、氏のナンバーの「ワクワク感」を醸し出す要因の一つではないかと個人的には思っています。
この曲について
個人的な思い出話になって恐縮ですが、僕が一番最初に聞いたスクエアのアルバム(イコール初めて聴いたフュージョンのアルバム、なんですが)が本曲も収録されている「打ち水にRainbow」でした。このアルバムは「TRUTH」や「Adventure」「R・E・S・O・R・T」など、同時期のTHE SQUAREのアルバムと比べると地味なんですが、収録曲全部が名曲ぞろいで、このアルバムを最初に聴いたからフュージョン小僧になってしまった、と言ってしまってもいいくらい心が動かされたのを覚えています。「HELLO GOODBYE」で始まるA面の元気な感じもいいのですが、「黄昏で見えない」で始まり本ナンバーにつながるB面の(この言い回しで年がばれますね...)切ない感じがホントにたまりません。そんなアルバムの中で、一番のお気に入りがこの曲です。曲のタイトルは、これもケータイ全盛の今だとピンとこない人もいるかも...ですが、東京から大阪への電話って意味ですよね。
打ち込みでは、このころ(80年代前半)に特徴的なシンセの音をそれらしく表現するのが一番大変でした。サックスは情感たっぷりな伊東氏の演奏をなるべく再現するようにしたつもりですが、すこしくどくすぎたかも、という気もしています。
そして最後に。
和泉さん、素晴らしいたくさんの曲と演奏、本当にありがとうございました。