きんけけ宅録楽部(楽屋)

趣味のギター&打ち込みの楽屋裏的解説。

Overnight Sensation/THE SQUARE

演奏動画

アルバム"STARS AND THE MOON"から、中期スクェア感満載のポップなナンバー、「Overnight Sensation」のバッキングトラックです。動画はエレキギターパートを除いたバッキングトラックになっています。

youtu.be

構成・コード進行・解説

Tempo=159 Key=G

Intro→Ax2→B→C
→A→D→Ex2→C→F
→A→Axn(F.O)

Intro
 |G |F C/E C |D |% |

A
 |G9 |C9 |G9 |C9 |
 |G9 |C9 |G9 |C9 |

B
 |Am7 |D C |Am7 |D |
 |Am7 |D C |Am7 |D |

C
 |G D/F# |Em D |C |D |
 |G D/F# |Em D |C |D |% |
 |G D/F# |Em D |C |D |
 |G D/F# |Em D |C |D |% |% |% |% |

D(Keyboard Solo)
 |EbM7 |Dm7 |Cm7 |BbM7 |
 |AbM7 |Gm7 |D     |%        |

E(Sax/Gt Solo)
 |FM7/G      |% |CM7  |% |
 |FM7/G      |% |CM7  |% |
 |AbM7/Bb |% |EbM7 |% |
 |Am7         |% |C/D    |% |

F(Drums/Perc.Solo)
 |N.C.| x16

構成はちょっと変わっていて、1コーラス目はAメロ→Bメロ→サビと普通の展開ですが、2コーラス目はAメロ→ソロ(Bメロとは違うコード進行で、2パターンあり)→サビ、そのあとドラム&パーカッションソロを挟んでエンディング扱いのAメロパートが繰り返される、という形式になっています。

転調はそこそこ多いものの、使われているコードはかなりシンプルです。

AメロのG9→C9という進行はがっつりロックンロール(進行的にはGのブルース)で、ここまでド直球のR&Rはスクェアではかなり珍しいのではないかと思います。

Bメロの進行は一回しか出てきません。メロがベースとユニゾンという、とてもシンプルなアレンジになっていて、コード弾きするだけでメロディが感じられるというお得なつくり。

サビはカノン進行のバリエーション的な進行になっていて(4つ目に出てくるコードがIIIm/VじゃなくVになっています)ぐっとメロディアスな雰囲気です。ただ、進行的にはIVのあとは下降進行せず、Vを繰り返すやはりロックンロールな感じになっています。

ソロパートはこれまでと一転、フュージョンチックにm7・M7・オンコードの代理コードがたくさん出現します。

まずキーボードソロのコード進行はKey=Bbに転調、Loving youやJapanese Soul Brothersのサビと同じIV→IIIm→IIm(→I)という進行。後半4小節はさらにKey=Ebに転調して同じくIV→IIImと続きますが、そのあとは一気にKey=G(コードはVであるDM)に戻っています。

サックスとギターソロのコード進行は同じものが使われています。最初のFM7/G→CM7という進行は、AメロのG9→C9の「フュージョン/AOR的解釈」に見えます(F/GはG9の代理コード。これがCに進行しているということでCM7に進んでいる)。ブルース進行のAOR解釈的進行、というとスティーリー・ダンのPegのAメロを思い出しますね。

元のG9→C9という進行だとKey=Gのブルースと解釈するのが普通ですが、F/G→CM7だとこれはKey=CのV7→Iと解釈するのが自然です。次のAb/Bb→EbM7も全く同じ考え方の進行です(Key=Ebに転調)。というわけで、ソロの音選びもこれらのスケールが使われています。そのあとはKey=Gに戻るために、IIm7→V7にあたるAm→C/Dと進行しています。

この後のドラム&パーカッションソロはN.C.、ラストはAメロの進行でフェードアウトとなります。

 

 この曲について

RockoonからMagicあたりの ”THE” SQUARE 中期のサウンドは、カシオペアと違って同じフュージョン枠でありがながらどこかユルーイ雰囲気が漂っていたと思うのですが(伊東たけし氏もカシvsスクの座談会で自嘲的に話しておられました)、それはアルバムに何曲か仙波清彦氏のパーカッションがフィーチャーされたコミカルなナンバーが含まれていた影響も大きいと思います(Rockoonだと複眼人生とか、Magicだとタモリさんも参加して、さらにその傾向が強くなりますね)。今改めて聴いても「ジャンル不明」感をすごく感じます。

和泉氏加入後はスクェアというバンドにぐっと落ち着いた雰囲気が出てくるのですが、このOvernight Sensationはそういった「脱力系」時代の名残を持った最後の曲と思います。本ナンバーが収録されている「STARS AND THE MOON」というアルバム全体が「渋い大人の雰囲気」なので、この曲の能天気な調子がより際立っているという...。その分、この曲のサックスとギターソロの爽快感もとびぬけていると感じます。

打ち込みではドラム&パーカッションソロの箇所が一番ハードルが高かったです。二小節ごとに出てくるノイジーなSEも、途中から入ってくる太鼓のような音も正体不明ですし、後半で出てくるワチャワチャした歓声は泣く泣くオミットしてしまいましたが、全体的な雰囲気は、まあこんなものかなぁと。ちなみにラストのクレッシェンドしているノイズはSynth1で作っています。

ここまで書いていて思ったのですが、Overnight Sensationって、いまだとTRFの曲の方が有名ですよね...。TRF目当てで本文章を読んでしまわれていた方がおられたら、ゴメンナサイ。