ハンクとクリフ/THE SQUARE
演奏動画
自分のギター練習用のため、エレキギターパートを除いたバッキングトラックになっています...とは言いながらギターソロもなくほぼ全編カッティングという、キーボードが主役のナンバーですね。エンディング前のカッティングが唯一の見せ場です(ライブ映像では必ずここで安藤さんがクローズアップされますもんね)。
構成・コード進行・解説
Key=F(/Ab), Tempo=105.5
Intro→A1→B→A2
Interlude→A3→B→A2
C→Ending
Intro/Interlude/A2
|Gm7 |% |FM7 |FM7 Am7 Bb/Ab| x2
A1
|Gm7 |% |FM7 |FM7 Am7 Bb/Ab| x3
|Gm7 |% |FM7 |D7 |
B
|Bbm7 |% |AbM7 |% |
|Bbm7 |% |AbM7 |% |
|DbM7 |Dm7(b5) G7 |G7 |Gm7 |
|Gm7 |% |Gm7/C|Gm7/C C7|
A3
|Gm7 |% |FM7 |FM7 Am7 Bb/Ab| x5
|Gm7 |% |FM7 |D7 |
C
|Gm7/C |% |FM7/C |% | x4
Ending
|Gm7 |% |FM7 |FM7 Am7 Bb/Ab|
|Gm7 |% |FM7 Gm7/C|FM7 |FM7 Gm7/C |FM7 |
曲の構成はほぼ2パターン。Gm7→FM7を繰り返すAパートと、展開部のBパートです。
Aパートはサブドミナント→トニックを繰り返す定番の進行ですね。この曲の場合はIIm→Iのパターンですが、IV→Iのパターンもよくあります。ちょっとわからないのが先頭に戻る前のBb/Ab。演奏する感覚としてはAbmでもよさそうな感じなのですが、よく聞くと確かにBbの構成音がなっています。これはBb7の7thをルートに持ってきた転回形(で落ち着く先が本来ならEbなんだけど、偽終止でGm)なのかなぁ。でも例えば転回形にせずそのままBb7で演奏すると違和感がすごいので、この解釈があっているのかどうかちょっと自信がありません。
Bパートへの進行直前にD7が来ているのは面白いですね。このままもう一度Gmに戻るのかと思わせておいて(D7はGmのドミナント)、Bパートで突然短三度上(AbM)に転調しちゃいます。「トニックのあとに転調」とか「セカンダリドミナントをはさんで転調」といった教科書的な転調でなく、循環的なコード進行の頭に戻る7thのあとでいきなり転調というのもアリなんだ、と思った曲です。実際、BパートをGm7→FM7に移調して演奏してもこれはこれで自然な流れに聴こえます(ただ、もちろん展開感はぐっと落ちますが)。
Bパートは前半はAパートと同じようにIIm→Iを繰り返し、IV(DbM7)に進行します。この後のコードは表面的にはDm7(b5)→G7なのでCmに流れ込むマイナーのツーファイブみたいに見えるのですが、演奏をしてみるとDm7(b5)はDbM7からのクリシェ的な動きに感じます。そのあとのG7→Gm7の流れが僕にはさっぱり説明が付きません。聴いていると変な感じはしないんだけど、これはどういう意図なんだろう...。
※記事初回執筆時点ではこのGm7が何かわからない...と書いていましたが、これはこの後に続くC7(Gm7/Cも含む。こいつもC7の代理コードですからね)のIIm→V7化と解釈すればよかったんですね。以下のアレンジはちょっと凝った進行を作るときによく見られます。本ナンバーで言えば、以下のようにアレンジor作曲されていったのではないかと想像します。
1)基本形はV7(C7)
2)そのV7に対してセカンダリードミナントであるII7を配置(G7→C7)
3)さらにV7をIIm7→V7化(G7→Gm7→C7)
4)さらにV7に代理コードを挟む(G7→Gm7→Gm7/C→C7)、この形はsus4的(この場合だとC7sus4)にも解釈できます。
この後はGm7/C(=IIm7/V、よくあるV7のフュージョン頻出代理コード)でKey=Fに戻ってきていますよ、という感じを出しつつAパートに戻ります。
ソロもほぼ同じコード進行。ライブではエレピソロになるA3セクションの長さが変わります。
CパートはAパートの変形。シンセの音がベースとして持続音を鳴らしているのでこの表記としています。アルバムではリリコンが短いソロを吹きますが、1986年ごろのライブ映像では須藤さんがベースソロを弾いたりもしていて、とても心地いいパートです。
この曲について
シブイ曲なんですが、中期スクエアの中堅代表曲と思います。いつも和泉さんがいい感じの表情でエレピソロを弾いておられましたね。
これは全く個人的な話題になるのですが、当時所有していた機材ではベンド情報がやりとりできず、ライブ映像で見るイントロのシンセブラスのベンドダウンにとても憧れを感じていたのを覚えています。そういえば、河野啓三さんはここはベンドダウンせずにグリスで対応されていますね。
曲のタイトルはミュージシャン(ハンク・マービンとクリフ・リチャード)からとったのかと勝手に思っていたのですが、犬の名前説もあるそうで。このアルバムのナンバーのタイトル付けにはユーミンもアイデア出しされているので謎です。
閑話休題
スクエアの曲も何曲かYouTubeに投稿したのですが、これまで全く安藤さんの曲を作っていなかったの気が付き(本当にタマタマです)、ちょっと地味だけどこの曲のカッティングが好きなのでオケを作っておくかと作成しだしたところに飛び込んできた「安藤正容T-SQUARE勇退」のニュース。自分がギターを弾きだしたのは確実に安藤さんの影響なので(Famous/伊東たけしをライブでやってた時のライトハンドにしびれた)本当に寂しい限りです。42年間お疲れさまでした&素晴らしい楽曲と演奏ありがとうございました。
というわけで、いつもはスクエア→カシオペア→歌モノみたいな流れで作成しているのですが、しばらく安藤さん祭りにしたいと思います(なんのこっちゃ)。